引き返せないことを知るのが大人だろうか。
人生にこまやかな慈愛の眼を注ぎながら心に染み入る筆で描く『哀切の人』。
直木賞作家・伊集院静のファンのために小説・エッセイなど著書を紹介しています。
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志賀越みち
伊集院 静
光文社 刊
発売日 2010-03-19
オススメ度:★★★★
伊集院版「伊豆の踊子」「金色夜叉」 2010-06-26
京都・祇園に長期にわたって住み込み、四季の移ろいを肌で感じた作者ならばこその深い描写は健在。祭り、年間行事、しきたり、そこに住み働く人たちの所作や心持ちなどを、深い愛情を持った眼差しで観察して、文章にする作業はとても気持ちがよい。
ただし、いくら昭和38年に設定したとしても「学士先生」と「舞妓」の悲恋はあまりにも古い題材で、新鮮味が感じられない。「渡辺淳一の後継者」と評した方がいたが、やはりホームグランドは「無頼派」で、「阿佐田哲也」のように競輪に冠大会を作ってもらうほうが古くからのファンにとってははるかに似つかわしく感じるし、うれしい気がするのも事実。
久しぶりに、しっとりした「大人の恋愛小説」を読んだ…… 2010-06-08
主な舞台は京都。伊集院氏は夏目雅子さんが死んだあと、 芸妓の佳つ乃さんと京都で暮らしていた時期があった。
その頃、滋賀県の競輪場によく通ったという。
京都と滋賀をつなぐ峠が「志賀越え」である。
伊集院静というと、無頼派の「ザ・作家」というイメージだが、 この本は氏の恋愛観の滲み出た、落ち着いた恋愛小説である。
ことさらに大きな「ヤマ場」をつくらずに淡々と物語は進むのだが、 それでも一気に読まされてしまった。
圧倒的な筆力である。
京ことばが、実にいい。もともと伊集院氏は京都の生まれだから、 台詞回しに真実味がある。
もうひとつ。出色が「装幀」。
恋愛小説に女性の写真……となるとありきたりとも思えるのだが、 この写真と、その使い方には、何とも言えない抒情性と迫力がある。
「ああ、本を読んだ」……そんな気になった読後感であった。
京ことばの奥深さの魅力 2010-05-07
伊集院氏の作品はいくつか読んでいました。
新聞の書評を読んで、私も「羊の目」以来の購入でした。
呼んでいる途中から三島の「春の雪」の松枝清顕と聡子を思い浮かべました。切ない恋の物語を久しぶりに堪能致しました。
学生時代を京都ですごしましたので、京言葉も地理や場面も容易くイメージする事が出来ました。
「荒神橋」や出町柳からの「叡電」で鞍馬へ等等、懐かしく思い出しました。
さらに詳しい情報はコチラ≫
伊集院 静
光文社 刊
発売日 2010-03-19
オススメ度:★★★★
伊集院版「伊豆の踊子」「金色夜叉」 2010-06-26
京都・祇園に長期にわたって住み込み、四季の移ろいを肌で感じた作者ならばこその深い描写は健在。祭り、年間行事、しきたり、そこに住み働く人たちの所作や心持ちなどを、深い愛情を持った眼差しで観察して、文章にする作業はとても気持ちがよい。
ただし、いくら昭和38年に設定したとしても「学士先生」と「舞妓」の悲恋はあまりにも古い題材で、新鮮味が感じられない。「渡辺淳一の後継者」と評した方がいたが、やはりホームグランドは「無頼派」で、「阿佐田哲也」のように競輪に冠大会を作ってもらうほうが古くからのファンにとってははるかに似つかわしく感じるし、うれしい気がするのも事実。
久しぶりに、しっとりした「大人の恋愛小説」を読んだ…… 2010-06-08
主な舞台は京都。伊集院氏は夏目雅子さんが死んだあと、 芸妓の佳つ乃さんと京都で暮らしていた時期があった。
その頃、滋賀県の競輪場によく通ったという。
京都と滋賀をつなぐ峠が「志賀越え」である。
伊集院静というと、無頼派の「ザ・作家」というイメージだが、 この本は氏の恋愛観の滲み出た、落ち着いた恋愛小説である。
ことさらに大きな「ヤマ場」をつくらずに淡々と物語は進むのだが、 それでも一気に読まされてしまった。
圧倒的な筆力である。
京ことばが、実にいい。もともと伊集院氏は京都の生まれだから、 台詞回しに真実味がある。
もうひとつ。出色が「装幀」。
恋愛小説に女性の写真……となるとありきたりとも思えるのだが、 この写真と、その使い方には、何とも言えない抒情性と迫力がある。
「ああ、本を読んだ」……そんな気になった読後感であった。
京ことばの奥深さの魅力 2010-05-07
伊集院氏の作品はいくつか読んでいました。
新聞の書評を読んで、私も「羊の目」以来の購入でした。
呼んでいる途中から三島の「春の雪」の松枝清顕と聡子を思い浮かべました。切ない恋の物語を久しぶりに堪能致しました。
学生時代を京都ですごしましたので、京言葉も地理や場面も容易くイメージする事が出来ました。
「荒神橋」や出町柳からの「叡電」で鞍馬へ等等、懐かしく思い出しました。
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お父やんとオジさん
伊集院 静
講談社 刊
発売日 2010-06-08
オススメ度:★★★★★
これが実話とは驚き 2010-09-25
作者の父親が朝鮮戦争時代に実際に行ったことをベースにした小説だ。在日朝鮮人として日本で結婚した両親の馴れ初めから始まり、第二次大戦終了後、朝鮮半島に渡った義理の両親と弟を救うために、朝鮮戦争の最中の朝鮮半島に単身で乗り込んだ父親の姿が描かれている。
600頁を超える大作であるが実に面白い。著者は幼いころには粗野な父親より韓国の軍人として成功したおじさんを尊敬していたと書いてあるが、何も語らない父親がこのようなことを成し遂げていたと知った時に驚きはいかばかりであったろう。
小説としても面白いが、これが実話に基づいたと知ると、このような義理人情に厚い勇敢な男が実際に存在したことに改めて感銘を受けた。
“事実は小説よりも奇なり”は現実だった 2010-07-27
伊集院さんの筆力に感嘆し深い感動を覚える本である。氏のお父さんの話であるとともに筆者自身の生い立ちの記でもある。古来、日本人の文化は大陸、特に朝鮮半島から渡来した人々とともにに伝わってきたものが多く、その歴史は古い。文化という言葉の定義の核心にあるものは人間の精神活動であると理解しているが、伊集院さんの育った家庭には親から子へと伝えられる(学校教育では身につかない)躾が厳然としてあるように感じた。儒教の教えからくる多くのものが家庭の中に息づいている環境が伊集院さんを育てたと思う。
この本の前半の多くのページは、両親と、その事業に関わる人たちの中で伊集院さんがどのように育っていったかが語られている。その環境は父親を中心とする強い家族愛で結ばれた日々であったが、男の子が必ずといってよいほどに長ずるに従って避け得ない父親との葛藤も描かれているが、家族の絆が壊れることはなく父親が息子をどれほど大切にし愛していたかがよくわかる。伊集院さんの父親に対する尊敬と愛が確固たるものになっていくのであるが、恐らくはその想いが、この本を執筆されているなかで強まっていったものと推察されるのである。
母の弟が民族のアイデンティティに目覚めて朝鮮に渡り、朝鮮戦争の中に身を投じていく中で戦争の残虐な実態の数々に触れ悩む様が描かれているが、それは母が父に「弟を助けてほしい」と懇願したことによって、父が義弟救出に向かうことにより始まるのであるが、この本の「後半の後半」の大部分が救出の一部始終のドキュメントとして語られている。動乱の中、不屈の意志をもって山野を駆け巡り遂に義弟救出を果たすのである。朝鮮戦争当時、私は20歳であり学生アルバイトを通じて戦争の実態に触れていたので、この本の物語として、伊集院さんの母の義弟救出成功は当時の韓国内の混乱の中においてはまさに奇跡と言えるものと思う。
伊集院さんのお父さんの家族愛の大きく深いことが伝わってくる。お父さんは「男の中の男」の典型であり、男の本質である「自己犠牲」を、自身が言葉で語ることなく実践で示されたのである。
伊集院さんは成人の後、この父親の偉大な不屈の精神、深く強い家族愛を、身体が震えるような感動をもって体得し、これをいつの日か必ず書くという思いを永年、心の中に秘めてこられたものと思う。
男の中の男 2010-06-20
伊集院さんの作品は骨太な環境の元で育ったのにいつでも風の匂いや花や空を感じることで出来る。
この作品も今までの幼少期について書かれていたものと似通ってはいるが雑誌連載の時から続きが気になり、でも「なぜオジさん?」と気になっていた。
読んでも読んでも「オジさん」より「お父やん」の物語だと思ったから・・・。
「お父やん」のどんな困難な事だと思ってもやりとげる力強さは読んでいてもすがすがしく思える。
久しぶりに本の厚さより内容の濃さに圧倒される素晴らしい本だった。
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伊集院 静
講談社 刊
発売日 2010-06-08
オススメ度:★★★★★
これが実話とは驚き 2010-09-25
作者の父親が朝鮮戦争時代に実際に行ったことをベースにした小説だ。在日朝鮮人として日本で結婚した両親の馴れ初めから始まり、第二次大戦終了後、朝鮮半島に渡った義理の両親と弟を救うために、朝鮮戦争の最中の朝鮮半島に単身で乗り込んだ父親の姿が描かれている。
600頁を超える大作であるが実に面白い。著者は幼いころには粗野な父親より韓国の軍人として成功したおじさんを尊敬していたと書いてあるが、何も語らない父親がこのようなことを成し遂げていたと知った時に驚きはいかばかりであったろう。
小説としても面白いが、これが実話に基づいたと知ると、このような義理人情に厚い勇敢な男が実際に存在したことに改めて感銘を受けた。
“事実は小説よりも奇なり”は現実だった 2010-07-27
伊集院さんの筆力に感嘆し深い感動を覚える本である。氏のお父さんの話であるとともに筆者自身の生い立ちの記でもある。古来、日本人の文化は大陸、特に朝鮮半島から渡来した人々とともにに伝わってきたものが多く、その歴史は古い。文化という言葉の定義の核心にあるものは人間の精神活動であると理解しているが、伊集院さんの育った家庭には親から子へと伝えられる(学校教育では身につかない)躾が厳然としてあるように感じた。儒教の教えからくる多くのものが家庭の中に息づいている環境が伊集院さんを育てたと思う。
この本の前半の多くのページは、両親と、その事業に関わる人たちの中で伊集院さんがどのように育っていったかが語られている。その環境は父親を中心とする強い家族愛で結ばれた日々であったが、男の子が必ずといってよいほどに長ずるに従って避け得ない父親との葛藤も描かれているが、家族の絆が壊れることはなく父親が息子をどれほど大切にし愛していたかがよくわかる。伊集院さんの父親に対する尊敬と愛が確固たるものになっていくのであるが、恐らくはその想いが、この本を執筆されているなかで強まっていったものと推察されるのである。
母の弟が民族のアイデンティティに目覚めて朝鮮に渡り、朝鮮戦争の中に身を投じていく中で戦争の残虐な実態の数々に触れ悩む様が描かれているが、それは母が父に「弟を助けてほしい」と懇願したことによって、父が義弟救出に向かうことにより始まるのであるが、この本の「後半の後半」の大部分が救出の一部始終のドキュメントとして語られている。動乱の中、不屈の意志をもって山野を駆け巡り遂に義弟救出を果たすのである。朝鮮戦争当時、私は20歳であり学生アルバイトを通じて戦争の実態に触れていたので、この本の物語として、伊集院さんの母の義弟救出成功は当時の韓国内の混乱の中においてはまさに奇跡と言えるものと思う。
伊集院さんのお父さんの家族愛の大きく深いことが伝わってくる。お父さんは「男の中の男」の典型であり、男の本質である「自己犠牲」を、自身が言葉で語ることなく実践で示されたのである。
伊集院さんは成人の後、この父親の偉大な不屈の精神、深く強い家族愛を、身体が震えるような感動をもって体得し、これをいつの日か必ず書くという思いを永年、心の中に秘めてこられたものと思う。
男の中の男 2010-06-20
伊集院さんの作品は骨太な環境の元で育ったのにいつでも風の匂いや花や空を感じることで出来る。
この作品も今までの幼少期について書かれていたものと似通ってはいるが雑誌連載の時から続きが気になり、でも「なぜオジさん?」と気になっていた。
読んでも読んでも「オジさん」より「お父やん」の物語だと思ったから・・・。
「お父やん」のどんな困難な事だと思ってもやりとげる力強さは読んでいてもすがすがしく思える。
久しぶりに本の厚さより内容の濃さに圧倒される素晴らしい本だった。
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